● Sb系重点物質(ROs_4Sb_12:R=Ce、Pr、Sm)では、Rサイトの充填が不十分なため、重要な問題が未解決で残されている。今回、重い電子超伝導体PrOs_4Sb_12について、高圧下フラックス法で育成した単結晶を用いて、"超伝導特性の試料依存"を系統的に調べ、結晶場分裂(△CEF)と超伝導転移温度・電子有効質量の明白な相関を見出した。これは、この物質の重い電子超伝導の機構に△CEFが重要な役割を果たしている証拠である。また、Ceの不完全な充填率による可能性が指摘されていた"CeOs_4Sb_12単結晶が低温で示す不思議な秩序相の試料依存性"について、高充填率が期待できる高圧下フラックス法により単結晶を育成して磁気特性、電気抵抗の測定を行い、常圧育成試料との顕著な違いを確認した。より広範な物理量で詳細な測定を行うことにより、原因の解明を行っている。 ● 遅れているAs系単結晶育成・物性評価の視点からは、SmFe_4As_12、GdFe_4As_12、の純良単結晶の育成に成功した。前者は、多結晶試料用いて、二つのグループにより、矛盾する磁気的基底状態が報告された物質である。今回、育成された単結晶を用いた測定により、異方性を考慮することにより矛盾が解消されることを明らかにした。一方、LaFe_4As_12については、大きな残留抵抗比から高い充填率が保証された単結晶で、電気抵抗の圧力依存性を測定したところ、圧力とともにCurie温度(Tc)は減少し、抵抗のT^2依存の係数が増大する。更に、圧力が2GPaでは強磁性転移を反映する、電気抵抗の温度依存性における曲がりは、0.4K以下となり、低温での抵抗温度依存性の幕は7^<5/3>となることを見出した。これらの事実は、量子臨界点が2GPa近傍にあることを示している。
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