近年、いくつかの候補物質が合成されてその新機能探索に期待がかかるスピンナノチューブと呼ばれる系のうち、最も単純でしかも量子効果・フラストレーションが強い三本鎖スピンナノチューブについて、以下のような新しい量子現象の可能性とその機構を明らかにすることを目的として、理論的・計算科学的研究をする。 (1)スピンギャップ現象 高温超伝導の発現機構に関係することから注目されるスピンギャップが、どのようなパラメータで形成されるか、格子の自由度も考慮した相図を求めて、物質設計の指針を与える。 (2)磁場中で起きる新奇な量子現象 スピン及びカイラリティの自由度に着目し、外部磁場によりどのような量子現象が起きるかを、理論的に予測し、磁場によって制御される新機能を明らかにする。 (1)(2)の問題について、スピンナノチューブの理論模型に対して、場の理論・摂動論・数値的厳密対角化・密度行列繰り込み群を適用して理論的・数値的に解析する。
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