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低温の金属基板表面に有機分子を吸着させて、励起原子ビームによるイオン化反応によって電子分光法と反応動力学的研究手法を併用して反応の立体ダイナミクスと表面化学反応に関する知見を得た。本研究では、反応の断面積が衝突エネルギーに依存してどのように変化するか(部分イオン化断面積の衝突エネルギー依存性)を観測する手法で、観測された電子状態(バンド)の帰属を確定的なものにした。具体的には、代表的な5員複素環式芳香族化合物であるチオフェン分子をアルカリ金属のナトリウムを使って脱水素化して重合反応を促した研究や、アクリロニトリル分子を基板の加熱によって重合反応を促した研究など、金属表面上での新たな化学反応を見出した。
さらに、これまで電子構造に関して未確定であった遷移金属錯体(フェロセンとジベンゼンクロム)に関して、部分イオン化断面積の衝突エネルギー依存性と高精度な量子化学計算を駆使して、イオン化状態の帰属を確定した。これらの化合物は電子相関効果が非常に強く、電子状態に関する研究が遅れていた経緯があるが、本研究によって進展させることが出来た。
また、レーザーを使った光ポンピング法によるスピン偏極ビームの生成の準備を開始した。この開発は、次年度も引き続き進展させる必要がある。
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