本研究の目的は、中性原子気体のボース凝縮体を利用してシュレディンガーの猫状態を生成し、量子情報処理において培われた手法を用いて状態を厳密に評価することにある。具体的には、凝縮体中のスピン依存衝突相互作用を利用してユニタリーな形でスピンスクイーズド状態を生成し(1軸捻り)、その後発生した原子コヒーレンスの一部を光に転写し、それをフォトンカウントすることで、原子系の子猫状態を生成する。 平成20年度、本研究を遂行する上で基本となる^<87>Rb原子のボース凝縮体を生成することに成功した。得られた凝縮体の個数は最大で10^6個であり、今後の実験を進めるうえでも充分な数が確保されたといえる。しかしながら、超弱磁場を準備するという点においては、当初計画を実現することができなかった。それは、凝縮体を生成する際に使用する磁場トラップと磁場遮蔽に使用するパーマロイとを共存させることに難があったためである。平成21年度では、強磁場化でのパーマロイの磁化特性の評価からはじまり、その補正、さらには強磁場を用いない光トラップのみによるボース凝縮体の生成実験を平行で進めていく。研究の進展速度をあげるために、光トラップのみによる凝縮体生成実験を行う専用の超高真空装置を立ち上げる。
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