本研究の目的は、中性原子気体のボース凝縮体を利用してシュレディンガーの猫状態を生成し、量子情報処理において培われた手法を用いて状態を厳密に評価することにある。具体的には、凝縮体中のスピン依存衝突相互作用を利用してユニタリーな形でスピンスクイーズド状態を生成し(1軸捻り)、その後発生した原子コヒーレンスの一部を光に転写し、それをフォトンカウントすることで、原子系の子猫状態を生成する。昨年度、我々は当初計画通り、強磁場化でのパーマロイの磁化特性の評価を行った。その結果、磁場トラップによるBEC生成と弱磁場環境の保持を両立させることが極めて難しいことが判明した。そこで、強磁場を用いない光トラップのみによるボース凝縮体の生成実験を開始した。平成22年度、我々は、超弱磁場環境下で冷却Rb原子集団を集めることに成功し、さらに真空ガラスセルに対してブリュースター角で光を進入させる技術と、ボウタイ型光共振器技術とを組み合わせた新しい光トラップ装置を構成した。残念ながら光トラップを行うために自作した1um帯光源が、頻繁なモードホップをおこすという問題が発生し、光トラップを実現するには至っていない。しかし、モードホップの問題については、これをほぼ完全に抑圧することに成功したので、今後直ちに光トラップ、蒸発冷却を行い、当初目的を達成している予定である。
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