本研究の目的は、パルス光による連続変数エンタングルメントの生成技術の開拓を進めること、そして、因果的な分離と高検出効率の2つの条件を同時に満たすエンタングルメントを実現することである。平成21年度は、通信波長帯のナノ秒のパルス光を用いた実験と、高繰り返しのピコ秒パルス光を用いた実験において、エンタングルメントの質の改善に取り組み、様々な知見を得ることができた。通信波長帯の実験では、バルク型の非線形結晶を用いることで、パラメトリック増幅のための励起光を4倍程度に高出力化することができた。しかしながら、これを用いたスクイージングは導波路を用いた以前の数値よりも劣り、従来からバルク結晶を用いていたピコ秒の実験とほぼ同じ数値が得られた。導波路とバルクの違いは、励起光のパルス時間幅にあり、導波路では内部変換効率が100%に近づくために、励起光のパルス幅が元のレーザーと同程度になるのに対し、バルク型結晶では、変換効率が強度に比例するために、元のレーザーのルート2分の一程度となる。この違いがスクイージングに影響を与えるのは、スクイーズ光とLO光のパルス幅の関係であり、励起光のパルス時間幅が短いと、LO光のパルスの方が時間幅が長いためにスクイーズの度合いが小さな部分を測定してしまうためと考えられる。すなわち、スクイーズ光とLO光のパルス時間幅の関係が決定的な影響を与えていることが示唆された。モードフィールド径の大きな光導波路を用いた励起光の高出力化は、以前よりも優れた結果を得ることはできず、これは導波路長が長いためであると考えられる。ピコ秒パルスを用いた実験では、対称性が良くなるように光学系を新たに組みなおし、エンタングルメントの大きさに与える影響を調べた。これらの実験より得られた知見は、エンタングルメントの生成技術の開拓に資するものであり、平成22年度の研究に活用することにより、ループホールフリーのエンタングルメントの実現につながるものである。
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