本年度は、次の具体的な研究課題に注目した。 1. 単一共役性高分子内の発光サイトのマッピング 前年度に引き続き、共役性高分子鎖内の発光サイトのマッピングの研究を行った。超高分解顕微イメージング法を用いて、共役性高分子MEH-PPV単一分子内の発光サイトのマッピングの分子量依存性および溶媒効果を調べた。この技術を用いることで、数nmオーダーの精度で分子内発光サイトを特定することができる。結果として、分子量20万のMEH-PPVと同様に、少数の発光サイトへの高効率のエネルギー移動が起こり、単一高分子鎖内で発光サイトの空間的移動が起こることが分かった。発光サイトの移動距離が、いわゆる共役ドメーンサイズを示し、そのサイズは数mnから数十mnの範囲で分布している。その分布の形や幅はMEH-PPVの分子量および溶媒の種類に依存しないことが分かった。この結果は、少なくとも分子量の5万と分子量の260万の範囲で、ドメーンのサイズはMEH-PPVの化学構造や欠陥の数で決まっている。今度、同様な実験を分子量のさらに小さいMEH-PPVのオリゴマーおよび欠陥のないMEH-PPV行う予定である。 2. 単一高分子鎖のトポロジーと拡散現象の関係 関連研究として、高濃度溶液における高分子の拡散と高分子鎖一本のコンフォメーションの関係を調べ始まった。色素分子でラベルした環状Poly(THF)及びリニアーPoly(THF)を用意し、それぞれのラベルした高分子をラベルしていないPoly(THF)に溶かし、拡散を1高分子鎖のレベルで調べた。結果として、リニア高分子とは違って、環状のPoly(THF)か異なる2種類の拡散モードを示していることが分かった。
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