印象派の精神とは、ソフトマターの先駆的研究でノーベル物理学賞を受賞した故de Gennes教授が、科学者を印象派画家に例えて提唱した、枝葉末節に目をつぶりシンプルな本質をえぐりだす精神である。本研究は、この精神に基づき、濡れや破壊等の問題を研究し、シンプルで直感的な理解を得ることを目的としており、本年度は以下の研究を行った。 I.破壊 (1)自作実験装置を使い非線形高分子シートの破壊特性を調べてきた結果、破壊法則に関するスケーリング法則が明らかになってきた。(2)引っ張り速度を変えながら(1)の実験ができる装置を自作し試験的測定を開始した。(3)真珠層を模擬したネットワークの破壊についての2次元シミュレーションを行い、以前の解析理論の物理的意味を明らかにして論文にまとめた。(4)真珠層の2次元シミュレーションモデルの研究の蓄積をクモの巣の2次元モデルに発展させ、クモの巣の縦糸と横糸の強さの差がクモの巣の力学的適応性を高めていることなどを明らかにして論文を発表した。 II.二次元バブル・液滴の動力学 微量の液体をコントロールすることは、最先端のテクノロジーやバイオ実験等でますます重要になってきており、閉じ込められたバブルや液滴の動力学のシンプルな理解を提示することは大変重要である。我々は、2次元的な空間に閉じ込められたバブルや液滴に着目しシンプルで独創的な実験装置で高精度な測定を可能にしてきた。昨年度より高速カメラを購入して研究を進めた結果、バブル破裂の動力学とそれと相補的な滴の融合についてのスケーリング法則とその物理が明らかになってきている。さらに、滴やバブルの下降や上昇の動力学についても同様に研究を進めてきている。また、粉粒体の実験的研究も開始した。
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