研究概要 |
分岐高分子のからみあいダイナミクスは工業的にも重要だが定量的に記述できていない. 本研究では申請者独自の粗視化モデルを, 実験的な定量検証を通じて改良すること, および, 結果を踏まえて新しい理論モデルを構築することを目的とする. 応募者の増渕はこれまでに星型とH型高分子のダイナミクスに関する粗視化理論の提案を行っているが, 実験データの不足により定量的な検証は不十分である. そこで本研究では構造の整った星型高分子やH型高分子における実験を研究グループの内部で実施する. 特に本研究では非対称星形および非対称H形高分子において系統的な研究を行っている. 具体的にはシミュレーションと実験で分岐点と分子の運動を調べ, 動的管膨張理論などを応用した高速粗視化理論を検討する. 本年度は昨年度に続いてシミュレーションコードの改良と検討, 動的管膨張理論の検討, 実験試料の合成を行った. また実験データとシミュレーション結果との比較も実施した. Lee et al, Macromolecules 38, 4484-4494 (2005)の非対称星型高分子, 対称星型高分子, および直鎖高分子の濃厚溶液に対する実験結果とシミュレーション結果を比較したところ, すべての場合において定量的な一致を見た. 本研究で開発中の理論モデルにおいて分岐点周辺のトポロジカルな緩和が正しくあ使われていることの証左といえる. 今後従来の理論でパラメーターとして扱われている分岐点の(トポロジカルな)拡散係数や, 分岐点の拡散を抑制しているトポロジカルなケージの大きさについて定量化し議論を精密化する.
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