研究課題/領域番号 |
20340114
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小河 正基 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (30194450)
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キーワード | マントル進化 / 水 / 地球 / 火星 / 金星 / スーパー地球 / 数値モデリング |
研究概要 |
本年度の研究の目的は、地球及び火星のマントル進化に置ける水の役割を解明することと、金星のマントル進化のモデリングを構築することにあったが、以下に述べるように、この目標はほぼ達成することができた。 (1)地球に関しては、水の有無に関わらず、マントルは45億年の歴史の中で、激しいプルーム火山活動とカオティックなプレート運動に特徴づけられる初期段階と、間欠的なプルーム火山活動と秩序だったプレート運動により特徴づけられる後期段階の二段階で進化することを確認した。さらに、地表面に豊富に存在する水は初期の段階ではあまりマントルにリサイクルしないが、後期段階に入ると海洋質量分程度リサイクルする可能性のあることを示した。現在、地球が形成期に大量の水を内部に含んでいたと仮定した場合、地球の進化にどのような影響を及ぼすかを調べている。 (2)火星に関しては、水を含むマントル進化のモデリングを完成した。その結果、形成期にマントルにあったと思われる水の大部分はマグマオーシャンにより脱ガスしてしまうこと、残った水は昨年度の研究で明らかにしたマントル進化の大枠を変えるほどの効果はないこと、形成期直後のマントルがあまり高温でない場合(1800K以下)に限り、水は火山活動を実際の火星で見られるように45億年間継続させることを確認した。 (3)金星に関しては、深さ710km付近で起きるマントル構成鉱物の相転移のため、フラッシングが起きる可能性の高いことを示す結果を得つつある。 以上、当初予定した研究はほぼ順調に進んでいるが、これに加えて、近年宇宙観測により発見されつつある系外惑星の中の地球型惑星に関しても一定の成果を得つつある。特に重要なのは、地球質量の十倍の質量を持つスーパー地球では、強い断熱圧縮の効果で、マントル対流が困難であり、プレートテクトニクスが起こっている可能性は低いことを明らかにしつつあることである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していなかったスーパー地球について、プレートテクトニクスを含むマントル対流が起きていない可能性が高いという具体的な結果が得られたことは今後の研究につながる大きな成果であるが、金星の研究はやや遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
地球と火星に関しては、本年度の研究でほぼ目標を連成したので、今後は主に金星に関して、(1)フラッシングが本当に置き得るのかを、よりシステマティックなモデリングにより究明し、(2)その上で、水を考慮したマントル進化のモデル構築を目指す。さらに、本年度の研究で新たに得られた知見に基づき、スーパー地球のマントル対流に対する断熱圧縮の効果を、マントル物質の流動特性の大きな特徴である粘性率の強い温度依存性を考慮した上でさらに究明する。
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