本年度は、本研究の最終年度として、地球、金星、火星のマントル進化のモデルを完成させ、惑星のサイズや表層環境の違いが、その惑星の内部進化にどのような影響を及ぼしたかを総合的に考察した。 火星については、前年度構築したマントル進化モデルに水の効果を加えた。前年度の結果によると、水がない乾いたマントルでは、火山活動は火星形成後10-20億年程度で終息してしまい、つい最近まで活動を続けていたタルシスやエリジウムなどの火山活動が説明できなかった。本年度、水が岩石のソリダス温度を下げる効果を考慮すると、これらの長い期間活動する火山活動が説明できる事がわかった。さらに、火星が形成期にマントルに含んでいた水の大部分は、形成直後の火山活動によって外界に放出されてしまう事、このため、水のマントル物質の粘性率を下げるという効果は、火星のマントル進化にほとんど影響を及ぼさないという結果を得た。 次に、地球の火成活動マントル対流結合系に水が及ぼす効果を究明した。本計画で2009年度に、マントルに含まれる放射性元素の崩壊による内部熱源の減衰の結果、マントルは初期のプレートがカオティックに運動していた時代から、プレートがより整然と動く現在のテクトニクスの時代へと2段階で進化した可能性のある事を示した。今年度は、このモデルに水を加え、水がマントル物質のソリダス温度を下げるという効果のもとでもマントルは2段階で進化すること、マントル対流の時間スケールが数十億年と非常に長いため、マントルの中では水は不均質に分布し、特に下部マントル深部に多く存在するはずであるという結果を得た。 さらに、金星のマントル進化のモデルを実行し、金星のマントルは間欠的2層対流の時代から全マントル対流の時代へと進化したという結果を得た。
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