4年計画の2年目にあたる平成21年度は、超高圧条件下における非晶質物質の構造を正確に求めるためのX線回折データの解析方法を確立し、データの測定に関する実験方法と合わせて論文にまとめ公表した。また、前年度に得られたSiO2ガラスの密度と構造の圧力変化に関する知見やその他の超高圧実験からの知見をもとに、地球深部でのマグマ(ケイ酸塩メルト)の浮沈に関する考察を行い、マグマが負の浮力を持つためには、これまでの推定に比べ、FeO成分に富むかSiO2成分に乏しくなければならないとの結論が導かれた。平成21年度からの新しい取り組みとして、SiO2ガラスの4配位から6配位への変化の詳細を解明するため、CO2レーザーを導入して、アニール実験の準備を進めた。また、SiO2ガラスの降伏強度の圧力依存性に関する放射光実験を開始した。結晶の降伏強度の測定については、放射光X線を用いた先行研究が比較的多く報告されているが、ガラスについての研究としては初めてのものである可能性が高い。1980年代に実施された唯一の先行研究(別手法)とは異なる興味深い結果が測定され始めており、今後、相違の原因を検討し、真実を解明したいと考えている。ガラスの降伏強度はメルトの粘性と密接な関係があると考えられるため、得られた結果をもとに、地球深部でのマグマの粘性についての考察を行うことで、浮力についての考察の結果と合わせて、地球マントル深部のダイナミクスの理解に役立てたい。
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