4年計画の3年目にあたる平成22年度は、1-2年目に実施した100GPa領域までのSiO2ガラスの密度と構造に関する測定結果を論文としてまとめて公表するとともに、それらの測定結果に基づく地球マントル深部におけるマグマ(ケイ酸塩メルト)の浮沈に関する考察を論文としてまとめて公表した。これらの研究成果は、高い評価を受け、4件の招待講演と2件の依頼原稿執筆などが年度内に行われた。また、当初、非晶質物質の降伏強度測定に関する実験データの解析方法を確立して、測定の完了しているSiO2ガラスの降伏強度の圧力依存性についての研究成果を論文としてまとめることを計画していた。ところが、それを進める過程で、SiO2ガラスにヘリウム分子が大量溶解するという思いがけない発見があったため、当初計画を変更して、その発見を論文としてまとめることを最優先に研究を進めた。ダイヤモンドアンビル装置を用いて、光学顕微鏡観察、ラマン散乱測定、放射光X線回折測定を実施することで、10万気圧程度まで加圧しても、構造中の空隙にヘリウムが入り込むためにSiO2ガラスの体積がほとんど減少しないことや、その時のヘリウムの溶解量がSiO2ガラス1モルに対して1~2モル程度であることなどが明らかになった。ヘリウムは、地球進化過程のトレーサーとしても活用されており、今回の発見は地球化学的にも重要である。現在、すでに論文としてまとめられ、学術雑誌に投稿中である。
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