研究課題
地震波走時トモグラフィーは、日本列島下に沈み込むスラブに起因する複雑な3次元構造を鮮やかに描き出してきた。この走時トモグラフィーは、滑らかな速度構造を仮定している。本研究では、従来の走時トモグラフィー法では解明できなかった地震波速度不連続面の形状および境界面での速度コントラストに焦点を当て、地震波走時トモグラフィーとレシーバ関数(RF)解析を統合したレシーバ関数(RF)トモグラフィー法により、日本列島下の「地殻・上部マントルの3次元地震波速度構造を明らかにすることを目的としている。まず、九州下におけるモホ面のRFイメージングを行い、モホ面の深さ分布を求めた。さらに、地震波干渉法の応用として、震源間のS波走時検出法の検討に加え、震源域およびその周辺の速度時間変化検出の手法を検討した。次に、RFトモグラフィー法の第1ステップとして必要な、既存の3D速度構造を初期モデルとした、Fast Marching Methodに基づく、不連続面のRFイメージング法の開発を行った。また、RFイメージング法で検出された低速度層は間隙流体を含む可能性が高く、こういった間隙流体圧変動が地震サイクルに与える影響評価のため、以下の地震発生シミュレーションを実行した。ひとつは、地震時摩擦発熱による間隙圧上昇(TP : Thermal Pressuriztion)の効果で、地震時TPにより応力降下量とすべり量が増大し、地震の発生間隔を延ばすことが分かった。ふたつめは、圧力溶解といった化学反応による間隙減少により引き起こされる地震間における流体圧の増大により、地震発生間隔が短くなり地震発生を抑制する可能性があることが分かった。
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Geophysical Research Letter 36
ページ: doi : 10.1029/2009GL039932
Journal of Geophysical Research 114
ページ: doi : 10.1029/2008JB006220
地震 61
ページ: S199-S207