平成18年度に伊豆弧で実施した海底地震観測のデータを用いてマントル地震波速度構造イメージングの取りまとめを行い、論文を投稿した。主な結論としては、1)マントル・ウェッジ内の低速度帯のセグメント化を確認したが、その分布は中部地殻の厚さの変化(即ち、火山分布)には直接的には対応しておらず、むしろ地殻構造全体の長波長の構造変化に対応し、いくつかの火山を一つにグループとして取り込むように分布していることが分かった、2)前弧域にもいつくかの低速度帯が確認された、これは前弧域に存在する古島弧の地殻の分布に対応しているように見える。また、散乱構造(短波長の速度構造の揺らぎ)に関する結果も論文として取りまとめ、投稿準備中である。 これらの結果をもとに、南部伊豆小笠原弧での地震観測網の検討を行い、9月にJAMSTEC海洋調査船「かいよう」を用いて海底地震計40台の設置航海を実施した。その後、3か月の観測を行い、12月末「かいよう」により40台の地震計全数の回収を完了した。平成21年度はそれらのデータの整理を行い、自動処理による地震活動全体像の把握を行った。その結果、南部伊豆小笠原弧でも上記平成18年度観測以上の地震活動があることが確認され、今後、地震の読み取りを進め、北部伊豆小笠原弧と同様な地震波速度構造のイメージが可能であると考える。データ取得は本科研費研究の成否に関わる重要な部分であったが、十分当初目標を達成できた。
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