研究課題
今年度に実施した主な研究成果は、以下の通りである。1.海洋大循環モデルの結果を解析することにより、セーシェルドーム(南西インド洋熱帯域の大規模湧昇ドーム現象)の経年変動は、先行研究で指摘された西方伝播してくるロスビー波だけでなく、局所的なエクマン湧昇の変動によることが明らかになった。2.ダイポールモード現象の過去115年間の発生頻度と規模をケニヤのサンゴ年輪解析から復元した。その結果、西インド洋の温暖化によって10年周期だったダイポールモード現象が2年前後に短周期化し、エルニーニョ/南方振動現象に代わってインド洋の気候を支配していることを発見した。3.ダイポールモード現象のテレコネクション(遠隔地への影響)により、チベット高原では、低気圧性偏差が形成されて、水蒸気フラックスの収束が起こるため、正のイベントの年に積雪面積が異常に拡大することを大気大循環モデルの感度実験より検証することに成功した。4.観測データと海洋大循環モデルの結果の解析により、南インド洋の亜熱帯ダイポールモード現象の新しい発生メカニズムを提唱することに成功した。具体的には、まず、マスカリン高気圧の変動により、南インド洋西部(東部)に正(負)の偏差が現れる。すると、南インド洋西部(東部)の混合層が異常に薄く(厚く)なり、短波放射の気候値により混合層が暖まりやすく(暖まりにくく)なる。その結果、南インド洋西部(東部)に正(負)の海面水温偏差が成長し、正の亜熱帯ダイポールモード現象が発達する。なお、亜熱帯ダイポールモード現象には、地球温暖化に伴う顕著な長期変調は見られなかった。
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