研究概要 |
ロケット実験により,熱圏電離圏内に人工的に中性大気雲とプラズマ雲を同時に発生させ,可視化することによって,その運動をモニターし,大気・プラズマ結合過程の本質を世界に先駆けて解明する. [研究実績] (1)大気プラズマを可視化するためのリチウムガス放出機器(リチウムキャニスター)を設計し,日本カーリット(株)で燃焼試験を実施した.分光観測により,670nmの共鳴線が放出されていることを確認した.3台のリチウムキャニスターをロケットに搭載し薄明時での中性大気観測が可能であることを確認した.(2)明け方に,高度100km~300kmに放出したリチウムガスによる共鳴散乱光を地上から観測するために.カメラとフィルターを購入し光学試験を行った.高知・内の浦・奄美大島の3観測地点の現地調査を行った.(3)2007年に実施した実験の解析から,リチウムイオンが生成されていることが判明した.大気プラズマ同時観測が確実に実施できることを確認し,論文を投稿した.(4)リチウムガスの放出による熱圏大気の応答について,高解像度の2次元モデルを構築しコンピュータシミュレーションを実施した.リチウムガス放出に伴い~100秒周期の重力波が生成されることを示していた.2007年のロケット実験による熱圏大気変動を説明できる.この成果は国際会議での招待講演で報告した.(5)NASAがリチウムキャニスターに興味を示し,2011年6月に米国ワロップスでのロケット実験にリチウムキャニスターを搭載する米国との打ち合わせと,来年度の観測に向けて準備を行っている.(6)熱圏大気のスーパーローテーションを駆動しているのは,磁気赤道上空の大気プラズマである.磁気赤道付近にロケット発射場があるインドの研究者と,ロケット実験の将来構想について議論した.熱圏上部を観測するために,ナトリウム,ストロンチウム,バリウムなどの原子ガス放出についても検討した.
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