計画2年目の平成21年度には、前年度の新モデルの開発状況を受け、解析解があるテスト問題や従来のモデルを用いた過去の研究との比較が可能な標準的な問題および観測との比較に基づく検証を行いつつ、新モデルの基本部分となる数値コードの概念設計を確立した。ドリフト運動論近似に基づく、粒子のボルツマン方程式(運動論の方程式)とマクスウェル方程式を組み合わせ、粒子と場の時間発展を自己無撞着に解くことができる数値コードの定式化と、空間極座標での数値コードのプロトタイプを構築し、昨年度導入したクラスター計算機を用いてテスト計算を行った結果、期待される動作を確認できた。昨年度からの変更点としては、座標系を、粒子の磁力線に捕捉されたバウンス運動やAlfven波の伝播をより正確に解きやすい双極子磁場座標系へと修正した。こうして開発した新しい定式化と数値コードへの実装、テスト計算結果を、現在、論文にまとめている。 また、上記の環電流モデルの開発と並行して、環電流による磁場変形や低周波波動が放射線帯の粒子加速に果たす役割を果たすため、任意の電磁場モデルの中で、正確に相対論的電子の軌道を追尾する3次元ドリフト近似テスト粒子コードの開発を行った。テスト計算後に、経験的磁場モデルであるTsyganenko磁場モデルを用いた計算などを行った。その結果、太陽風動圧の上昇時に地磁気軸の傾斜角の効果を考慮すると、相対論的電子の孤立した成分が、昼間側磁気圏に残ることが可能なことが明らかとなった。これは3次元性を考えて初めて理解できる現象であり、得られた成果は学術誌に掲載された。この他、環電流モデルへの境界条件を与えることを視野に入れ、外部磁気圏のMHDシミュレーションのための、波動記述特性がよく磁場のソレノイダル性を精度よく満たすアルゴリズム開発も行った。
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