本研究の目的は、これまで全く注目されてこなかった「岩石の力学的不均質性」について、その測定法(定量化)、原因、応用を広く検討することで、新しい視点の確立を目指すことである。本年度の実績の要点を以下に示す。 (1)石英について、圧痕形成面の結晶方位の影響があるのかどうかを詳細に検討した。使用した圧子はバーコビッチ三角錐圧子で頂角が80°、68°、65°、45°のもの、ビッカース四角錐圧子、およびヌープ圧子である。4方向の結晶面で圧痕形成実験を行ったが、実験結果をlog(圧痕深さ)-log(ループエネルギー)ダイヤグラム上にプロットした結果、それぞれの圧子での結果は別々の直線関係を示すが、同一圧子を利用した場合には異なる結晶方位での結果も同一の直線関係を示すことがわかった。すなわち、マイヤー硬度は結晶方位異方性を持っていないことがわかった。 (2)レーザーラマン分光装置の中で圧痕形成実験を行うためのジグを作成した。ヘルツ圧子を用いて、石英に点接触を起こさせ、そこを直接顕微鏡で観察することができた。しっかりしたニュートンリングを確認した。 (3)超臨界水中(亜臨界水中)で点接触変形実験を行った。使用した圧子はルビーで作成した。その結果、点接触部で異常に高い溶解速度を確認した。すなわち、一度大気中で圧痕を形成した試料を超臨界水中で溶解させた場合よりも三倍程度深い溶食痕が確認できた。圧痕の大きさも明瞭に異なっていた。
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