研究概要 |
平成20年度は,コア試料計測用の走査型ESR顕微鏡を作成することを主な目的とし,変調磁場コイル内蔵型ピンホール共振器とコア試料を移動させるための三角レール式試料移動台を作成した。ハーフカットしたコア試料表面のESR計測を連続的に行う場合,これまでの外付け型変調磁場コイルでは試料表面からの距離が離れすぎるために機能せず,変調磁場コイルを内蔵したピンホール共振器を作成する必要があった。今回新たに作成した変調磁場コイル内蔵型ピンホール共振器では,当初懸念された変調磁場の強度不足は認められず,また試料表面からピンホールを1〜2mm離した状態でもESR信号を検出できることが判明した。これにより,ハーフカットコア試料表面を遠隔操作でもESR計測ができることになる。また,走査型ESR顕微鏡を用いて,野島断層沿いに分布するシュードタキライトの二次元磁化率計測を実施し,磁力計による測定データと比較検討した結果,両者は非常に良く一致することが確認でき,走査型ESR顕微鏡による二次元磁化率精密計測が実用可能となった。一方,台湾チェルンプ断層掘削コア試料の粒状試料によるESR計測の結果,1999年集集地震時に活動したと推定される1136m黒色ガウジ帯全体でスメクタイト起源の四重信号が消滅あるいは減衰していることが判明した。この信号を用いて年代測定を実施した結果,数万年以内に消滅あるいは減衰した可能性があることが明らかになった。また,1136m黒色ガウジ帯ではマグヘマイトが減衰してヘマタイトが生成している可能性が示唆され,1136m黒色ガウジ帯は1999年の地震時には摩擦熱はそれ程上昇せず,高温熱水が通過した可能性が指摘される。
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