研究概要 |
平成21年度は, 走査型ESR顕微鏡の改良を行い, ピンホールの位置を円筒状共振器の底面に変更した変調磁場コイル内蔵型共振器を新たに作成した。これにより, ボーリングコアのような長い試料の連続測定が可能になった。なお, コア試料の移動及びESR装置制御のためのコンピュータプログラムに関しては, これまでに作成した計測用プログラムでも十分対応可能であった。次に, 連続ESR計測データから一次元及び二次元磁化率分布図を作成するための手法の検討を行った。特に, 標準試料に関しては, Niなどの強磁性体は地質試料との磁化率の差が大き過ぎるので向かず, 地質試料に近い磁化率を持つ常磁性体(A1等)や磁化率が既知の地質試料を標準試料として用いることが望ましいとの結論に至った。また, 台湾・チェルンプ断層掘削コア試料をマルチセンサーコアロガー(MSCL)で計測した時に得られる磁化率データとバルク試料を用いた磁力計による磁化率データが一致しなかった原因は, MSCLの印可磁場強度が約80A/mと極端に小さいことにあり, 弱い保磁力を有する超常磁性的な試料からは極低磁場で大きな磁化率が得られてしまうことが明らかになった。今後, MSCLにおいて弱い保磁力を有する試料の磁化率計測を行う場合には, 細心の注意が必要である。さらに21年度には, コア試料の微小領域を加熱するためのレーザー加熱及び温度計測システムの作成が完了した他, チェルンプ断層掘削コア試料の二次元ESR及びビトリナイト反射率計測のための研磨試料の作成が終了した。一方, 掘削コア試料のESR年代測定を実施した結果, これまで報告されている1999年集集地震時における断層活動面とは別の断層面を高温熱水が通過した可能性が高いことが明らかになり,ESRによる磁化率計測と年代測定を組み合わせることにより,掘削コアから最新の断層活動面を特定できる可能性が示された。
|