研究概要 |
平成22年度は,まず前年度までに新たに作成したレーザー加熱及び放射温度計測装置の試運転を兼ねて,実際に野島断層ガウジや室戸岬斑レイ岩等を試料として加熱溶融及び温度計測を行った。その結果,加熱溶融及び温度計測を共に精度良く実施できることが確認できた。これにより,通常の電気炉による加熱では,試料全体を炉の中に入れて加熱するために,加熱後には試料がボロボロに破壊されてしまい,非破壊計測が出来なくなるという問題を解決することができた。また,加熱溶融後の試料をEPMAで分析した結果,Al,Ca,Ti,Naなどの特定の元素が溶融によって拡散・濃縮することが判明し,今後,台湾チェルンプ断層掘削コア試料等の天然の断層岩試料を用いて断層摩擦溶融現象を解明して行く上での指標を見つけることが出来た。 次に,本研究計画の主要テーマである走査型ESR顕微鏡による二次元磁化率計測法の精度を調べるために,野島断層岩や斑レイ岩等の様々な磁化率を持つ岩石試料について,高分解能磁化率計(Bartington社製磁力計MS2及びMS2Eセンサー,感応範囲3.8mm×10.5mm,検出限界10^<-5>SI)を用いた計測結果との比較検討を行った。その結果,両者の結果は誤差範囲内で非常に良く一致することが確認できた。また,今回作成したESR顕微鏡では,0.25mm×0.25mmの高分解能で10^<-4>(SI)レベルの磁化率を十分に計測できることが確認できており,今後,反射あるいは偏光顕微鏡等による観察結果と比較・検討することが可能になった。 一方,チェルンプ断層掘削コア試料を用いた研究としては,断層摩擦熱による断層ガウジの磁化で生成されるフェリ磁性共鳴(FMR)信号と断層摩擦熱により消滅するモンモリロナイト固有の四重信号に加えて,今回研究対象とした石英固有の空孔型信号であるE_1'中心が断層の最終活動時期を特定するのに役立つことを確認することができた。またビトリナイト反射率の計測については,チェルンプ断層掘削コア試料の研磨片を用いた計測が一部終了し,断層摩擦熱が上昇したと考えられる部分において反射率の上昇が確認できた他,南海トラフ地震発生帯掘削コア試料へも適用し,摩擦熱の上昇を検出することに成功している。
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