研究概要 |
本年度は以下の研究を行った。 1.スッポン(Pelodisucs sinennsis)およびニワトリ(Gallus gallus)の卵殻中に含まれる生体高分子の粗抽出物に対してそれぞれ作成したウサギポリクローナル抗体を用いて,カメ類10種,ワニ類8種,鳥類5種,有鱗類2種の合計25種の鳥類・爬虫類の卵殻から抽出した生体高分子との免疫化学アッセイを行い,抗原抗体反応の強さを基に,カメ類の系統学的位置の推定を行った.その結果,スッポン抗体は,カメ類に次いで鳥類,ワニ類と強く反応し,有鱗類と一番弱く反応すること,ニワトリ抗体は,鳥類に次いでワニ類,カメ類の順に強く反応し,有鱗類と一番弱く反応すること,すなわち,カメ類は有鱗類よりも鳥類,ワニ類に近いという最近の分子系統学的研究による系統仮説が支持されることを明らかにした. 2.鳥類の卵殻に基質タンパク質として含まれるとされるオステオポンチンの部分配列に対して作成した抗体を用いて,ニワトリ卵殻にはオステオポンチンが含まれず,スッポン卵殻にオステオポンチンが含まれる可能性があることを明らかにした. 3.スッポン卵殻に含まれる基質タンパク質Pelovaterinのアミノ酸配列をもとに,DNAプライマーを作成し,このタンパク質をコードする相補的DNAの増幅を試みた.その結果複数のバンドが得られたが,当該タンパク質に対応する配列の増幅は認められなかった.次年度に継続して適切な実験条件を探り,当該遺伝子の増幅・単離を試みる予定である.
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