研究概要 |
1.微量元素組成に関する研究成果(棚部) 千葉県市原市の養老川河口干潟から採集されたアラゴナイト殻体を持つカガミガイ,ホンビノスガイの貝殻外層中の微量元素組成をLA-ICP質量分析計を用いて連続分析した.両種の微細成長縞は1朔望日(24時間50分)ごとに形成されるため,貝殻断面へ日レベルで時間目盛りを入れることができる,微量元素組成の日変動パターンを市原市沖の海洋モニタリングポストで自動測定された海洋環境の経時的データと比較した結果,Ba/Ca比は海水中の塩濃度が低下する日に増加する傾向が認められ、海水の塩濃度指標として利用できることが示唆された.この成果は、国際誌に投稿準備中である。 2.貝殻微細構造に関する研究成果(小暮) アコヤガイ真珠層の構造を電子顕微鏡等で詳細に観察し、その結晶核の発生や結晶成長の様子より、その形成機構に関する新しい知見を得た。またイワガキ幼生が形成する幼殻の構造についても同様に解析を行い、二枚貝幼殻に見られる初期アラゴナイト薄膜とその後の二重層の構造の詳細を透過電子顕微鏡で初めて観察することに成功した。これらの結果は国際誌(Biomaterials,Journal of Stmctural Biology)に公表した。 3.分子生物学的研究成果(遠藤) カガミガイの貝殻から抽出した水溶性有機基質と不溶性有機基質のそれぞれに対する抗体を用いて,貝殻中におけるこれらの有機物の分布と成長線との関係を調べた。その結果,成長線の形成において有機基質が重要であることが確認された.特に不溶性の有機基質は,すべての成長線の形成に関与しており,一方水溶性の有機基質は,貝殻表面の表面装飾にも現れる大きな成長線の形成に関与していることが明らかとなった。また,いずれの有機物も貝殻微細構造(稜柱構造)の形成にも関与していることが示唆された。
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