研究概要 |
20年度は,研究遂行に必要不可欠な安定同位体比質量分析装置を導入した.申請書に記載の通り,低コスト・高パフォーマンスの研究を目指しているため,国立大学ではあまり例がない中古品(オーバーホール品)の購入を行った.そのため,発注から海外メーカーによるオーバーホールのための移送,設備(オーバーホール条件なども含む)の諸条件などについて納入業者との交渉に時間が必要となり,設置が12月となった.地方大学の予算状況を鑑みて,低コストでの機器導入は,非常に貴重な経験となった.機器は,高価な消耗品の関係上,頻繁に炭素分析と硫黄分析のモードを変更することはできないため,まず炭素分析モードでの調整を行った.標準試料の入手に1ヶ月程度を要したが,1月末までには標準試料の配置,使用ガスの純度,予備分析の導入などを試みた結果,炭素分析で±0.1‰で分析するための試料処理・試料導入方法を確立した.この精度は,同グレードの機種の中では高いレベルである.炭素同位体比分析と同時に行うことのできる窒素同位体比についても±0.3‰以下の精度での分析が可能となった.硫黄の同位体比に関しては,入手が限定されている複数の国際標準試料を入手した. 実際の試料の分析はまだ分析していないが,資料調査を行い,Paleocene/Eocene境界の温暖化極大現象を含めた古海洋循環解読に関するレビューを行い,国内研究者啓蒙の意味も含め,日本有機地球学会の機関誌「Researches in Organic Geochemistry」および「月刊地球」に総説を投稿・掲載した.
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