本研究は、高エネルギーX線回折法および目的元素の環境構造解析が可能なX線異常散乱法に3次元原子配列を可視化できるRMC(Reverse Monte Carlo)法をドッキングすることによって、天然鉱物および人工メゾスコピック物質中距離秩序構造の定量的評価法を開発する。初年度は、(a)を実現できるエネルギー分散方式および(b)を導出できる単色平行ビーム方式の2つの解析モードに対応できる高エネルギーX線回折計(HEXD設備備品)の設計を行った。そして、天然メゾスコピック鉱物として、珪孔雀石およびアラナイトの構造解明を推進した。アラナイトに関しては産地の異なる試料の解析を行った結果、特にブラジル産アラナイトのメゾスコピック構造が通常の非晶質ガラスとは異なる微細の結晶を含有するタイプであることが明らかとなった。X線回折によって得られた動径分布関数の情報は、結晶質アラナイトの構造の特徴を明瞭に再現し、予想した通り天然メゾスコピック物質の構造解析には次年度整備を開始する密度コントラストが観測できる小角実験のドッキングが不可欠である。また、人工メゾスコピック構造に関しては、準結晶型メゾスコピック構造の存在が予想されるZr-Pd系およびZr-Pt系の試料を合成し、シンクロトロン放射光を用いたX線異常散乱の実験を実施した。現在RMC解析を進めているが、通常の金属ガラスには観測できない長距離相間を示す相関の存在が明瞭に観測できた。また研究の進展に伴い、これまでと異なる特性を持つZr基金属ガラスのメゾスコピック構造の研究も進めた。研究計画に記載した、強加工を施したCu-Agメゾスコピック合金の作製とX線異常散乱の実験も行った。Ag吸収端の実験は次年度6月に計画しているが、現在のところ、Cu吸収端の実験からは、本試料も微結晶を基盤とする構造と判断できる。
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