最終年度である本年度は、人工的に作製した苗木石およびケイ孔雀石や中距離領域構造をもつ非晶質金属やナノ結晶の構造解析を推進した。具体的には、放射性損傷によって構造ランダム化した天然苗木石の構造解析と比較検討できるゾルゲル法で作製した各種ZrO_2-SiO_2系酸化物の構造解析を系統的に行った。結果、ZrSiO_4ゲルの構造は、(1)使用する薬品の種類に著しく影響すること、(2)還留時間の関数として結晶質ZrSiO_4類似の中距離領域構造が発達することなど、当初の予想とは異なりかなり複雑な状況であることが判明した。また、ZrSiO_4ゲルからの低温結晶化は、前述の中距離構造の存在よりはむしろZrSiO_4種結晶の存在が大きく影響していることも明らかとなった。すなわち本系の場合、結晶化プロセスと非晶質構造中に存在する中距離領域構造とは直接的な関係がないと考えるのが妥当であると判断できる。天然の苗木石は、十分に還留したZrSiO_4ゲルよりもはるかに結晶質ZrSiO_4に類似し微細結晶粒子も頻繁に存在するため、結晶構造の回復が極めてはやいと理解できる。 また本年度は、昨年度作製したCu周囲の局所構造がケイ孔雀石ときわめて類似する人工物に関する解析も進めた。EXAFS解析で分別できないにもかかわらず、人工ケイ孔雀石は、Cu(OH)_2およびSiO_2ガラスの単純な混合物とは判断できない原子相関を示し、特徴的な中距離領域構造がゾルゲルプロセスの中で培われたことが明らかとなった。
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