研究概要 |
本研究の目的は、下部地殻中の流体の挙動や起源を総合的に理解するための新たな分析・解析法の開発と、それらの天然の岩石への応用である。4年間の研究期間の2年目である本年度は、4つの研究テーマのうち以下の2つについて行った。 1.流体包有物の融点および均質化温度の測定 前年度に購入した高性能偏光顕微鏡と既存のリンカム製加熱冷却台により、飛騨地域、南インドPalghat-Cauvery剪断帯地域、および東南極ナピア岩体の変成岩(計12試料)に含まれる流体包有物の融点および均質化温度の測定を測定し、組成および密度を推定して変成作用に関与した流体相の起源を推定した。これら流体包有物の一部は1g/cm^3を超える高密度の流体包有物であり、ピーク変成作用時にとタップされたものと考えられる。 2.流体包有物のラマン分析 フランス・ナンシー大学の世界最高の検出器をもった装置を用いて,流体包有物の化学組成を正確に決定した。その結果、流体相のほとんどはCO_2の濃度が95%を超え、微量のCH_4,N_2,H_2を含むことが明らかになった。また、今までに報告のないH_2のような極めて稀な流体相や、C_2H_6の同定にも成功した。なお、H_2,C_2H_6はピーク変成作用後の急激な冷却あるいは減圧によって形成されたと考えられる。 以上の結果について平成21年度に国内外の学会にて17件の発表を行い、査読雑誌印刷ずみ論文8件、紀要論文1件、投稿中6件がある。
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