研究課題/領域番号 |
20340149
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
黒澤 正紀 筑波大学, 生命環境系, 講師 (50272141)
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研究分担者 |
笹 公和 筑波大学, 数理物質系, 講師 (20312796)
小松原 哲郎 筑波大学, 数理物質系, 講師 (10195852)
安間 了 筑波大学, 生命環境系, 講師 (70311595)
辻村 真貴 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10273301)
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キーワード | 流体包有物 / 微量元素 / 花崗岩 / PIXE / 地下水 |
研究概要 |
本年度は、対馬の内山岩体を詳細に検討することで、島弧における浅所貫入した花岡岩の熱水流体発生の特徴を明らかにし、甲府花崗岩体の一部試料の再評価から花崗岩地下水組成と流体包有物組成の関係を解明することを主な目標とした。これまでの研究により、対馬岩体の主要な流体包有物である多相包有物のBr/Cl比(重量比)は、晶洞の石英単結晶内部で0.0015~0.0043に変化し、さらに岩体内石英脈の多相包有物では0.0020~0.108、鉱床石英脈では0.0020から0,0120に達することが明らかにされている。今回、このようなBr/Cl比の変化は、形成温度圧力条件が異なるために生じた高Br/Cl流体と低Br/Cl流体の混合によって説明できることが示された。こうした傾向はこれまで大陸地域の花崗岩では報告されていない。また、対馬岩体の多相包有物は大陸地域花崗岩の多相包有物に比べてTiとGeに富み、Rbに乏しい。甲府岩体の多相包有物もGeに富み、Rbに乏しい特徴を示す。これらは島弧の花崗岩起源流体の化学的特徴である可能性がある。甲府岩体と対馬岩体の熱水流体の発生温度圧力条件を推定すると、甲府岩体の流体は基本的に沸騰条件でない場所で発生し、その後に一部だけが岩体上部に移動して減圧沸騰したことが分かった。沸騰していない初生流体の低い金属濃度が金属鉱床の少ない理由に繋がったと推定できる。一方,対馬岩体は固結深度が浅いために流体は沸騰条件で形成されたことが明らかとなった。沸騰による流体の金属濃度の上昇が大規模な鉱床形成に結びついたと考えられる。また、甲府岩体に湧出する鉱泉のBr/Cl比は、海水の値や堆積岩に湧出する温泉の値とは異なり、流体包有物の平均的なBr/Cl比とほぼ一致することが示された。さらに、流体包有物の平均的な金属元素濃度を天水で希釈すると、甲府岩体の鉱泉の金属元素濃度とほぼ一致することも分かった。これらの結果は、鉱泉を形成する地下水が、流体包有物の破砕により漏出した流体の影響を受けている可能性を暗示する。
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