研究概要 |
1.角礫岩化の痕跡を持つCO炭素質コンドライト 二つの異なる岩相が接合した炭素質コンドライトであるNorthwest Africa(NWA)1232の研究を行った。このような特徴を持つ炭素質コンドライトはこれまで知られていない。両岩相の岩石鉱物学的特徴を調べた結果,両者ともにCO3タイプ隕石であること,そして,互いに熱変成度が異なっているために異なる岩相を示すことがわかった。隕石母天体上での角礫岩化の際に,熱変成程度の異なる領域にあった岩片が接合し,現在のNWA1232が形成されたと思われる。両岩相が同一母天体を形成していたとすると,今回の結果は,CO隕石母天体が場所によって変成の程度が異なっていたこと,熱変成作用の後に角礫岩化作用が起こったことを示唆している。さらにこのことは,既に報告されている多くの変成程度の異なるCO3隕石が,同一母天体を形成していた可能性が高いことを示している。 2、ヴィルト2彗星塵の主要構成物の化学的特徴:惑星間塵,隕石との関係 探査機スターダストが持ち帰ったヴィルト2彗星塵試料と惑星間塵およびコンドライト隕石の成因的関係を探る目的で,これらの主要構成物であるカンラン石,輝石,Fe-Ni硫化物の化学組成の特徴を比較した。彗星塵中のカンラン石,輝石の組成は,惑星間塵,隕石中のものに近いが,より広い範囲でFe/Mg比が変動することがわかった。このことは彗星における加熱の影響が,非常に少ないことを意味している。FeSと(FeNi)_9S_8の間の中間的組成が存在しないことは,これらの硫化物が非晶質状態から焼きなまされて(annealされて)できたのではないことを示唆している。ヴィルト2彗星塵からは,まだ含水層状ケイ酸塩は見つかっていないが,カンラン石,輝石,Fe-Ni硫化物の化学組成上の特徴からは,水質変成が起こった可能性は否定できない。
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