研究概要 |
1CAIのNa交代変成作用:隕石の特異な化学的特徴を生み出す要因 Ningqiang隕石は難揮発性包有物(CAI)に乏しく,既存のどのグループにも属さない特異な炭素質コンドライトとして知られている。これまで,Ningqiang隕石のCAIに乏しいという特徴は,この隕石が原始星雲から形成されたとき,何らかの要因によって難揮発性成分が取り去られたためだと考えられてきた。我々は,EPMAおよび電子顕微鏡による観察・分析によって,Ningqiang隕石のCAIの多くはNaに富むネフェリンに交代され,細粒化し,マトリックスに分散していくことを明らかにした。このことは,Ningqiang隕石母天体において水・熱の作用による大規模なNa交代変成が起こったことを意味している。これらの結果から,Ningqiang隕石の化学的・鉱物学的に異常な特徴は,隕石母天体におけるNa交代変成が要因であるという新たなモデルを提出した。 2コンドリュール・リムの組織解析:隕石母天体における水質変成の証拠 CM隕石は,隕石母天体上でさまざまな程度の水質変成を受けている。しかし,CM隕石のコンドリュールの周りを覆うリムは,天体集積以前に原始星雲で水質変成を受けた可能性があることが近年議論されている。我々は電子顕微鏡を用いて,CM隕石の中で最も隕石母天体上での水質変成の影響が少ないQUE97990隕石のコンドリュール・リムの観察・分析を行った。その結果,コンドリュールの周縁部に,鉄金属・鉄硫化物を含む湾状の窪みが多数存在することを見出した。それらの窪みは,コンドリュール中の金属・鉄硫化物からなるノジュールが水質変成を受けて形成されたと考えられる。組織解析から,窪みは金属・硫化物の溶解,元素の移動,再析出という一連の過程を経て形成されたと考えられ,それらの過程は水の存在下で起こったとするのが妥当であるという結論を得た。これらの結果から,QUE97990隕石のコンドリュール・リムの水質変成は,隕石母天体集積後に起こったという解釈を提出した。
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