研究概要 |
(1)コンドリュール・リムの成因:コンドライト隕石中のコンドリュールの多くは微粒子からなるリムに覆われている。リムはコンドリュールが原始星雲を漂っているとき,星雲中の塵をその表面に付着させて形成されたと広く考えられてきた。我々は,モコイアCV3隕石のコンドリュールとリムを,電子顕微鏡を用いて調べた結果,リムは最終的には隕石母天体で形成されたという結論に至った。モコイア隕石中の全てのコンドリュール/リムは様々な程度の水質変成を受けているのに対し,それらの間を埋めるマトリックスは水質変成の痕跡を示さない。このことは,コンドリュール/リムは,隕石母天体上のモコイア隕石が存在していた場所とは別の場所で水質変成を受け,その後,衝突による角礫岩化によって形成されたクラスト(岩片)であることを示唆している。リムとは以前の場所にあったときには,コンドリュールの周りにあったマトリックスだと思われる。 (2)衝撃を与えた含水隕石と原始星円盤の赤外スペクトルの比較:様々な圧力(10-49GPaの範囲)で人工的に衝撃を与えた含水隕石試料の赤外スペクトルと,原始星雲円盤を持つ様々な若い星の天文学的に観測された赤外スペクトルとの詳細な比較を行った。衝撃を与えた含水隕石のスペクトルはデブリ円盤のスペクトルと良い一致を示すことがわかった。調べた原始星は,高い圧力と低い圧力を受けた隕石のスペクトルに類似する2つのグループに分けられる。これらグループの違いは,含水ケイ酸塩の脱水およびケイ酸塩の非晶質化の程度の違いによって説明できる。原始星雲の非晶質物質およびガスは,星間物質由来と一般に考えられているが,我々の結果は,それらの主要な割合は微惑星衝突によって形成されたことを示唆している。この結果にもとづいて,様々な成長段階にある原始星雲内における塵の物性および微小天体同士の衝突による塵形成プロセスの推定・モデル化を行った。
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