研究概要 |
地球内部構造の研究では、上部マントルと下部マントルの境界付近と下部マントル底部の不連続性の問題が最重点課題として残っている。この研究が進まないのは高温高圧下の圧力スケールの基準となる衝撃圧縮データの精度が不十分であることと、高温への状態方程式の解析に問題があるからである。本研究では、この問題を根本的に解決するために高温のユゴニオを直接決定することを目的とする。 本研究ではロスアラモスデータを全く使わずにユゴニオを精度よく決定するために、圧力校正物質でもあり、衝突板や駆動板に用いる銅(Cu)やタンタル(Ta)、タングステン(W)の常温のユゴニオを計測し、金や酸化マグネシウム(MgO)について高温出発のユゴニオを計測する。 平成20年度までに、Cu,Ta,Wのユゴニオを100GPa以上まで測定し、次に、本研究の対象物質である金(Au)、酸化マグネシウム(MgO)について50GPa以上まで測定した。金ではロスアモスデータに比べて衝撃波速度が少し大きな結果を得た。MgO単結晶では、弾性限界に大きな結晶異方性があり、<100>軸方向では塑性域の粒子速度が約1km/s以下ではロスアラモスデータに比べて衝撃波速度が少し小さく、それ以上では少し高い結果が得られた。このことは状態方程式を導出する上で重要で、今後、多結晶を用いた測定やさらに高い圧力領域の測定が必要である。また、本年度は5kW高周波加熱装置を導入し、実際に衝撃銃にセラミックス製の試料マウントとタングステン製駆動板を取り付けて、常圧1000℃までの加熱も確かめた。今後、高温出発のユゴニオ計測実験を行う計画である。
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