研究概要 |
地球内部構造の研究では、上部マントルと下部マントルの境界付近と下部マントル底部の不連続性の問題が最重点課題として残っている。この研究が進まないのは高温高圧下の圧力スケールの基準となる衝撃圧縮データの精度が不十分であることと、高温への状態方程式の解析に問題があるからである。本研究では、この問題を根本的に解決するために高温のユゴニオを直接決定することを目的とする。 本研究ではロスアラモスデータを全く使わずにユゴニオを精度よく決定するために、圧力校正物質でもあり、衝突板や駆動板に用いる銅(Cu)やタンタル(Ta)、タングステン(W)の常温のユゴニオを計測し、金や酸化マグネシウム(MgO)について高温出発のユゴニオを計測する。平成21年度までに、Cu,Ta,Wのユゴニオを最高200GPa以上まで測定し、次に、本研究の対象物質である金(Au)について150GPa以上まで、酸化マグネシウム(MgO)について100GPa以上まで測定した。金ではロスアモスデータに比べて衝撃波速度が少し大きな結果を得た。MgO単結晶のユゴニオを100GPa以上まで計測した結果、弾性限界と塑性域のユゴニオは(100),(110),(111)方向で差がみられるが、圧力が高くなると結晶方向の差は小さくなっていく結果が得られた。また、本年度は昨年度導入した高周波加熱装置を用い、衝撃銃にセラミックス製の試料マウントとタングステン製駆動板を用いて、タングステン、金で出発状態がそれぞれ800℃、700℃でユゴニオ計測実験を行った。タングステンの常温のユゴニオでは、強度の効果が無視できないことが示唆された。
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