研究課題
本年度は、実際の天体衝突の条件をより忠実に再現するために、前年度のレーザー照射実験の結果に基づいてJAXA/ISASの2段式高速衝突銃施設を用いた実験を実施した。衝突実験においては、高速分光計測、フィルター分光計測、固体物質の回収分析を同時に実施した。まず、高速分光計測では、従来のNASA/Ames研究センターでは計測がなされていなかったCNおよびC_2分子の高波長分解能計測と時間分解計測(ストリークカメラを用いて気体分子発光を時間の関数として計測)に成功した。高波長分解計測の結果は、~7km/sの炭素質弾丸の高速衝突において発生する分子の熱状態がレーザー照射で発生する高温プラズマの熱状態でよく再現できることを示していた。また、時間分解計測の結果は、CNの濃度が時間と共に上昇することを示しており、衝突蒸気雲中で高い生成量を持っていることを明らかにした。さらに、フィルター分光計測では、CNおよびC_2の分子発光バンドに対応した波長の光を画像として計測することによって、CNの場所による生成効率の違いを調査した。実験結果は、理論的予測どおり衝突蒸気雲の先端部分においてCNの相対濃度が最も高くなることを示唆するものであった。これらの実験結果は、レーザー照射実験と衝突実験の定量比較を可能にするものであり、レーザー照射実験の結果を高速衝突で生成される物質量の推定に使えることを示唆しており、今後の研究の展開において非常に重要な意義を持つ。この一方で、固体回収分析については、プラスチック弾丸を使用した今年度の実験では、固体物質の収率が非常に悪く、シアン化合物の合成は検出できなかった。だが、実験プロトコル自体は確立できたので、次年度の実験の基礎固めをしたという意義は大きい。
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Icarus (印刷中 掲載確定)
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