研究概要 |
当初の交付申請書に記載した研究実施計画と変更はなく、以下の研究を行った。 1)99%以上に同位体濃縮したイオウ^<32>S,^<33>S,^<34>S,^<36>Sを入手し、SO_2に変換し、それぞれを合成石英窓のついた長さ10cmのガス用分光セルに封入した。本研究の物品費で設置した真空紫外分光光度計を用いて、170〜380nmの紫外線領域で、0.1nm幅で0.05nmステップの高分解能測定を行った。真空紫外域での高分解能スペクトル測定では装置全体を窒素ガス置換する必要があったことと、高分解能であったために測定に長時間を要した。また、現在のところ測定波長の較正に若干の問題がある。しかしながら、測定における再現性は非常に良く、^<32>SO_2,^<33>SO_2,^<34>SO_2,^<36>SO_2アイソトポマー間における波長依存性と吸収のクロスセクションを求めることができた。 2)SO_2を用いてイオウ同位体比測定(δ^<33>Sとδ^<34>S)を行うために、現有の同位体比質量分析計(IRMS)の改変を行い、検出器の調整することにより、SO_2のイオン化で生ずる開裂イオンであるSO^<+>の質量数48,49,50のイオン強度測定からδ^<33>Sとδ^<34>Sを±0.3‰の精度で分析できるようになった。 3)1)におけるSO_2アイソトポマー間の吸収クロスセクションの波長依存性をFarquharら(2001)によって行われたSO_2の193nmレーザーによる紫外線分解実験の同位体分別と定量的に比較を行い、速度論的同位体効果で実験値が説明できることを示した。この結果はレーザーのような狭い単一波長の照射によってSO_2に引き起こされる質量非依存同位体分別は自然界試料には一義的に応用できないことを示唆している。 これら得られた結果を国内外の学会にて発表した。しかしながら、^<32>SO_2,^<33>SO_2,^<34>SO_2に関してほぼ同じスペクトル測定が他のグループから学会発表・論文発表されたのには驚いた。
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