当初の計画通り研究を遂行し、以下の結果を得た。 1)昨年度に引き続き、西オーストラリアで採取された約32~25億年前の黒色頁岩ボーリングコア試料を用いて、含まれるイオウのδ^<34>Sとδ^<33>Sを分析した。約32億年前の頁岩のδ^<34>Sは約-5~+25‰(vs.CDT)と30‰にわたる幅広い幅を示したが、質量依存した同位体分別であった。それに対して、約27~25億年前のδ^<34>Sは約20‰の変化幅にもかかわらず、Δ^<33>Sが+8‰にも及ぶ質量非依存同位体分別を示したが、層準によっては、質量依存同位体分別のものもあった。 2)始生代堆積岩中のイオウ同位体分別を詳しく議論するために、黒色頁岩中のイオウ化学種(硫化物、分子イオウ、硫酸塩、ケロジェン結合イオウなど)を分離する方法を開発し、個々の化学種の同位体比を測定した。その結果、化学種の違いにより、Δ^<33>Sも異なることを見出した。 3)遊離酸素(O2)を含んだ現在の大気下において観測される南極氷床中の硫酸塩イオウの質量非依存同位体分別を説明するために、昨年度までに得られたSO_2のイオウ同位体置換アイソトポログの紫外吸収スペクトルを用いて、現在の大気モデル下での太陽紫外線によるSO_2の酸化で生じる硫酸塩の同位体分別をシミュレーション計算し、質量非依存同位体分別を再現した。 これらの結果を第57回日本地球化学会年会(於:埼玉)で発表するとともに投稿論文を準備中である。
|