研究概要 |
ITERにおけるアルフベン固有(AE)モードと高エネルギー粒子輸送、大型ヘリカル装置(LHD)における高エネルギー粒子駆動型測地的音響モード(EGAM)の線形成長局面での性質と非線形周波数変調、およびLHDにおけるAEモードによる高エネルギー粒子輸送についてシミュレーション研究を推進した。 ITERの定常運転プラズマのシミュレーション結果では、多数のトロイダルAEモードと低波数のベータAEモードが不安定であり、それらのAEモードによって高エネルギーα粒子と高速ビームイオンが輸送され、それぞれの圧力がプラズマ中心での値と比較して10%程度変化した。 EGAMの線形成長局面の性質として、空間的に一定の周波数を有する大局的モードであることを確認した。EGAMの各揺動成分のポロイダルモード数は、ポロイダル流がm=0, 密度と圧力揺動がm=1, 磁場揺動がm=2である。 EGAMの非線形時間発展では、実験での観測と同様の周波数変調が起こることを実証した。周波数は上方と下方の両側に変調する。ピッチ角変数とエネルギーの2次元速度空間における高エネルギー粒子分布関数の解析により、2組のhole-clump対が形成されることが明らかになった。1組はEGAMを不安定化する速度空間領域に形成され、もう1組は安定化領域に形成される。不安定化領域ではholeの軌道周回周波数が上昇しclumpの軌道周回周波数が下降するのに対して、安定化領域では振舞が逆となる。holeとclumpを構成する粒子の軌道周回周波数はEGAMの周波数とよく一致しており、周波数変調の期間においてもこれらの粒子がEGAMと共鳴し続けることがわかった。この結果は、波動の自発的周波数変調において、位相空間の不安定化領域から安定化領域へエネルギーが持続的に伝達されることを示している。
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