研究概要 |
超短パルスを使ったコヒーレントなX線光子源生成に向けた基盤技術として,分子の整列・配向制御機構を最適制御シミュレーションを用い数値解析した.平成22年度の成果として,(1)二原子分子の整列制御機構を統一的に理解する,振動数ネットワーク機構を導くことができた(成果は雑誌Physical Review Aに受理された).従来,パルス列を利用するさまざまな整列機構が提案されてきた.例えば,整列度合いが高いタイミングで照射,回転波束の運動エネルギーが最大になるタイミングで照射,古典回転周期に合わせた等間隔照射など,照射タイミングやパルス数に関して大きな意見の隔たりがあった.我々はオリジナル開発したシミュレーション法を用い,まず,最適な整列制御パルスを数値的に求めた.その結果,パルスは回転ラマン遷移に関する共鳴条件を満たす多数の周波数成分からなりかつ,それらが互いにネットワークを構成していることを明らかにした.近似ネットワークのバリエーションが,従来の種々の制御機構を説明できることを示した.(2)方法論的には,瞬間強度を抑制する新たなペナルティ法の開発に成功した。(3)偏光も含めた最適制御では,制御目的により一定の偏光をもつパルスや,時間に依存した偏光条件をもつパルスが得られた.2方向の同時整列制御では互いに直行する直線偏光パルスを交互に照射することで高確率で達成できることが分かった.一方,(4)配向制御では,整列制御と密接に関連していることを最適制御シミュレーションにより明らかにできた.まず最初のパルスは分子を整列させる.2つ目のパルスが作る分極ポテンシャルにより目的の方向を向いた分子は安定化され,逆方向を向いた分子は不安定化され運動が駆動される.両成分の強めあう干渉により,高い配向度合いを達成できる.以上から,非等方的な分子アンサンブルを生成するための基盤を構築できた.
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