研究概要 |
昨年度までに,科学的観点から厳密に雰囲気と条件を制御して,磁束変化に伴う水の構造と物性の変化を検証し,水の磁気処理効果を確認した。磁場中測定用ファイバーラマン装置で確認された磁気処理中の水のスペクトル変化を,磁場外の高感度ラマン装置で記憶として再確認した。真空蒸留した水に酸素を溶存させた場合にのみ,ラマンスペクトルや接触角,粘度,蒸気圧に変化がみられ,これらの間の相関は高かった。磁気処理効果の出現には誘導時間が必要であり,また,この効果は磁気処理終了後数十分にわたる記憶効果を示した。記憶の消失にも誘導時間がみられた。このような現象は,最近10年ほどの間に報告されるようになった,種々のクラスレートハイドレート形成時の誘導時間やハイドレート溶解後の再結晶化の際の構造記憶と酷似する。クラスレートハイドレート中の水の伸縮ラマンバンドは磁気処理前後の水の差スペクトルの形状とよく似ていた。また,このバンド形状は過冷却水のスペクトルとも似ていることから,磁気処理水は準安定状態の構造が関わっており,誘導時間や記憶効果はその形成や崩壊に関連していると推察される。磁気処理効果は磁気処理水を水に80%以上混合したときに初めて出現し,磁気処理時間とともに純安定状態が形成され,また,磁気処理終了後の時間経過とともに消失すること,つまり誘導時間の存在と矛盾しない。磁気処理による水物性の変化や機能発現は構造由来であり,この純安定な構造は保存されることが分かった。
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