入射分子のもつ並進エネルギーや内部状態といった初期条件が、固体表面でどのように維持伝達され、表面化学反応に至るのかという量子レベルでの分子情報伝達の解明を目指して、研究を推進している。本課題では、特に固体表面に入射する分子の配向や配列に着目して、引き続き起こる表面化学反応への効果を調べている。本年度は以下の2研究項目を行った。1.前年度に調整した金属表面研究のための反射赤外吸収分光装置を用いて、Cu表面のエチレン吸着系を利用して、配向・配列分子線実験のための予備実験を行った。金属表面で微小な分子配向効果測定が可能な安定度まで調整できているので、配向分子線源と接続して分子配向効果の観察を試みる調整を継続して行っている。分子配向効果は塩化メチル分子を用いて評価している。また、Si表面研究のために、多重反射赤外吸収測定を行えるように現有装置の幾何学的配置を変更するための部品の製作と調整を昨年度に引き続き行った。2.表面に入射する分子の配列選択用の高分解能速度選別器を備えた連続分子ビーム源を組み立て、調整を昨年度に引き続き行った。連続分子線源をもとにした新しい高輝度の配列分子線源の高分解能速度選別により、分子の回転運動の回転軸が表面に平行な車輪型か垂直なヘリコプター型かを効率よく制御できる。装置の組み立ては、ほぼ終える事ができた。装置作りとその調整ため、CH_3CNやCH_3NCを用いた研究まで発展させることはできなかったが、本研究により今後の配向・配列分子線を用いた研究を大きく展開する上での基盤作りは、クリアできたと考えている。
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