22年度は、昨年度までに構築した測定系の拡充・評価を引き続き行い、溶液系の生体関連分子や固体系の単一分子ダイナミクスの単一分子蛍光の検出による研究を展開した。高分子固体中の蛍光色素の並進拡散過程に対しては、従来の10倍以上高い時間分解測定(30ms)で画像を取得し、その解析を行うことにより2成分以上の拡散定数を導出し、その拡散定数の間の相関を解析する手法を確立した。これらの結果から、高分子固体には数10nm程度の高密度領域に加えて、数100nmから数μmの空間領域においても、これらの領域全体として他領域とは異なる粗密の違いが存在することを示す結果が得られた。更に、同一試料中に複数のゲスト蛍光色素を用い、それぞれの蛍光像を同時に測定できる検出システムを作成した。測定装置の評価を行い、空間分解能20-30nm、時間分解能で30msで二色同時蛍光像を取得できることを確認した。空間分解能については、2つの蛍光像の変位の相関解析を行い、適当な除震を行うことでサブ10nm以下の値が取得可能であることがわかった。微小液滴中の単一分子計測に対しては、試料作成法・検出法を確立し、ゲルに固定化された微小液滴系における色素の界面への吸脱着に伴う蛍光強度の変化から、平衡過程のダイナミクスを検出した。前年度までの結果を含めて総括し、生体分子を含めた熱平衡点近傍の揺らぎのダイナミクスの測定法について総括を行った。
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