研究概要 |
1.時間領域テラヘルツ分光システムの製作 帯域0.1~2.5THzの時間分解テラヘルツ分光システムを製作した。フェムト秒チタンサファイア再生増幅器の出力を2つに分けてポンプ光とプローブ光とした。ポンプ光を半導体結晶ZnTeの(110)面に照射し,テラヘルツ波を発生させ,軸外し放物面鏡とシリコン板を使った光学系と光学ディレイラインを組んだ。テラヘルツ波の検出には,遅延させたプローブ光をもう1つのZnTe結晶に照射して,結晶中の光整流を利用した。ポンプ光を光チョッパーでオンオフし,ロックインアンプを用いた高感度な検出を行った。また,プローブ光の入出力をサンプルホールドして除算規格化する回路を製作し,検出感度の向上をはかった。時間領域の波形をフーリエ変換することによって周波数領域のスペクトルが得られる。 2.反強磁性体の時間領域テラヘルツ分光 反強磁性体酸化マンガン(MnO)において,時間領域テラヘルツ分光法を用いた反強磁性マグノンの観測を行った。低温では0.8THz付近に反強磁性共鳴周波数が存在することが確認できた。共鳴周波数の温度依存性の測定から,共鳴周波数が温度上昇とともにネール温度(118K)に向かってソフト化していくことが確認できた。また,J=5/2に対する分子場近似を用いた理論によって観測された共鳴周波数の温度変化を説明できることがわかった。
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