研究課題
生体反応中間体の中には、人工系では極度に不安定であるために研究が困難な化学種が多くある。特に、システイン残基と活性酸素種および活性窒素種との相互作用によるレドックス制御機構については、不安定な反応中間体を含むものが多く知られている。本研究では、独自に開発したナノサイズのキャビティ型分子を活用することで、従来合成困難であったシステイン由来の生体反応中間体を安定化し、提唱されてきた反応機構を化学的に検証することを目的とした。本年度、まずキャビティ型骨格をもつチオールの合成を行った。剛直なm-テルフェニルユニットを基本単位とするフェニレンデンドリマー骨格をHart反応により構築し、そのキャビティ内を官能基化してチオールを合成した。また、高世代デンドリマー骨格のより効率的な構築法として、パラジウム触媒による芳香族C-H結合の活性化を経たカップリング反応の開発についても検討を行った。次に、細胞のがん化への関与が示唆されるラジカル種の安定化について検討した。キャビティ型立体保護基(Bpq基)を有するスルフェン酸(BpqSOH)に対して酸化鉛(IV)を作用させ、対応するスルフィニルラジカル(BpqSO・)を発生させた。このラジカルは極めて高い熱安定性を示し、o-ジクロロベンゼン中140℃における半減期は35分であった。これまで知られているスルフィニルラジカルの中で最も安定なt-ブチルスルフィニルラジカルでさえ、半減期はトルエン中-100℃の低温で0.07秒と報告されている。BpqSO・の場合、キャビティ型立体保護基の立体反発により分子間での二量化が効果的に抑制され、飛躍的に長寿命化されたと考えられる。
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