研究概要 |
炭化水素の長鎖は,官能基としての機能を注目されることはあまりないが,本申請では,そのやわらかい構造に基づく立体化学的機能を有機反応制御に利用する。炭素鎖は,鎖中に複数の不斉炭素を導入するとコンホメーション制御も可能で,より高度な立体化学の情報を与えることができる。これらの炭化水素長鎖を持つ有機分子触媒や,炭化水素長鎖を有する配位子を用いた金属分子触媒を設計・合成し,炭化水素基の特徴を利用した効率・選択性の高い分子変換反応を開発することを目的とする。以下の点を明らかにする。 直鎖アルキルの大きさは,溶媒極性や温度により大きく変わると考えられ,エンタルピーの変化を考慮しなければならない。少なくとも,そのやわらかい構造は,触媒分子の設計において,従来のいわゆるbulky groupとは異なり,分子への導入が容易である。また,何よりも入手が容易である。このアルキル基の長さを種々変化させることで,その有効な大きさを変えていくことが可能である。配位子の立体障害の大きさは,触媒の多量化や配位飽和による失活を防ぐことにつながる。実際銅の配位子である長鎖アルキル基導入型イミダゾールの一般性と湯有用性を明らかにすることができ,末端アルキンのMannich型反応やCuAAC反応において顕著な効果を見ることができた。とくにCuAAC反応においては従来の銅触媒では行えなかった立体障害のあるアルキンにおける反応を可能にし,水中でのCuAAC反応も可能にした。その結果糖誘導体の反応を容易に行うことができた。
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