強誘電性・反強誘電性液晶はその特異な構造と電場応答性から、液晶材料のみならず、強誘電メモリ材料、非線形光学材料など種々の次世代電子デバイスの重要な基幹材料の一つである。一方、金属錯体を組み込んだ強誘電性金属錯体液晶はスピン転移に伴う磁気メモリ特性や電荷移動に伴う非線形光学特性の増大など、従来の有機強誘電性液晶には無い新たな機能性の発現も期待できる。我々はこの強誘電性金属錯体液晶の研究開発およびナノパターニングによるシングルドメインドットを利用した超高速応答分子デバイスの創製を目的として研究を行った。 金属イオンを取り込んだ液晶は、金属錯体液晶(metallomesogen)と呼ばれている。不対電子すなわちスピンを有する金属錯体液晶は、そのスピンから創製される機能性が発現する。まず金属錯体液晶の構築として、中心金属イオンに鉄(II)あるいはコバルト(II)イオンなどを用いて金属錯体液晶の構築を行った。それらは長鎖アルキル鎖の長さや種類あるいは本数を変化させることで液晶転移温度を変えることに成功した。また中心金属イオンの動的電子状態から生じるスイッチング機能を有することが確認された。最後に今回得られた金属錯体液晶の誘電測定を行ったところ、混合原子価状態における強誘電特性およびスピン状態変化における強誘電特性を発現させることに成功した。すなわちスイッチング機能を有する強誘電性金属錯体液晶の開発に成功し、今後得られた強誘電性金属錯体液晶のデバイス開発を行っていくことが可能となった。
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