初年度である平成20年度では、新規な嵩高い単座アリールオキシド配位子を開発し、これらを補助配位子とする4族遷移金属錯体を合成して分子構造を明らかにした。まず、五員環と六員環が縮環したヒドロインダセン骨格を有するフェノール体(Rind-OH)を、対応するアリールリチウム(Rind-Li)とニトロベンゼンとの反応により合成した。次に、ジルコニウムテトラベンジル錯体と2当量のフェノール体との反応により、嵩高い単座アリールオキシド配位子を金属上に2つ有するジベンジル錯体を合成した。この錯体の分子構造をX線結晶構造解析により決定した。金属周りは四面体型の配位構造であり、2つのベンジル基はいずれもη^1-型に配位している。チタンおよびハフニウムのジベンジル錯体についても同様の反応により合成した。ジルコニウムジベンジル錯体とトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとの反応により、カチオン性ジルコニウム錯体を調製した。このカチオン種を均一系触媒として、二酸化炭素とヒドロシランからメタンとシロキサンに変換する反応を調査したところ、従来のキレート型配位子と比べて触媒活性が向上することを見いだした。基質としてはモノヒドロシラン類について中心に調査した。嵩高い単座アリールオキシド配位子の優れた立体効果により、配位不飽和で反応活性な金属中心を実現できることを明らかにした。さらに平成20年度では、嵩高い単座アリールチオラート配位子を開発した。
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