平成21年度は、平成20年度に引き続き、縮環構造を有するかさ高いアリールオキシド配位子の開発を行った。前駆体として対応するアリールクプレートを用い、酸素分子との反応により、フェニル置換インダセン骨格を有する非常にかさ高いフェノール誘導体を開発した。これと鉄アミド錯体との反応により対応する鉄二価アリールオキシド錯体を合成した。結晶中において特異な直線型二配位構造を有することを明らかにした。また、対応するアリールリチウムと元素硫黄との反応により非常にかさ高いアリールチオラート配位子を合成した。さらに、対応するアジド化合物の還元反応により非常にかさ高いアミド配位子を合成した。これらと鉄アミド錯体との反応では、直線型二配位構造を有する鉄二価アリールチオラート錯体およびアミド錯体がそれぞれ高収率で得られた。一連の直線型二配位構造の鉄錯体は極めて珍しく、大きな内部磁場を有することが予想されることから、磁気特性についてメスバウアーやミュオン分光法を用いて詳細な研究を行った。 また、平成21年度では、ヒドロインダセン骨格を有するかさ高いパラフェニレン型の二座配位子を開発した。インダセン骨格に2つの酸素原子を導入したかさ高いパラキノン誘導体を合成した。これと亜二チオン酸ナトリウムとの反応によりヒドロキノン体に変換した。また、パラフェニレン型のジブロモ体を出発原料としてパラジリチオ体やジグリニャール体を調製し、元素硫黄と反応させることにより、かさ高いジチオール化合物を合成した。 二酸化炭素還元の反応機構について理論計算化学によりアプローチした。金属中心に対するヒドロシランおよび二酸化炭素の配位に関する知見を得た。
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