研究概要 |
トリヌクレオチドリピート病と呼ばれる遺伝性の神経変性疾患は、遺伝子内の特定の3つの核酸塩基(トリヌクレオチドリピート配列)の異常伸張により発症する。異常伸長は、中間体として生成されるヘアピン構造形成に起因していると考えられており、熱力学的に準安定なミスマッチ塩基対がステム部位に存在することが特徴である。中谷らは、この構造に着目し、ハンチントン病に関連する(CAG)n配列を標的した結合リガンド(ナフチリジン-アザキノロンヘテロダイマー)を開発、これに基づくSPR(surface plasmon resonance)アッセイを提案している(Nat.Chem.Biol.2005,1,39-43.)。 本研究では、脆弱11染色体症候群Bに関連する(CCG)n配列を標的とし、これを高感度かつ簡便に蛍光検出しうるDNA結合リガンドの開発を試みた。ここでは、蛍光性のナフチリジン誘導体やプテリジン誘導体、アロキサジン誘導体、またピラジン誘導体等と(CNG)n配列との相互作用を網羅的に評価した。その結果、2-アミノ-1,8-ナフチリジン誘導体(AMND,2-amino-7-methyl-1,8-naphthyridine)が(CCG)n配列を特異的に検出しうることを見出した。(CCG)n配列では、ステム部位にCCミスマッチ塩基対が形成されることから、AMNDがミスマッチ塩基対部位のシトシンと相補的な三点水素結合を形成することで結合し、(CCG)n配列特異性が発現しているものと考察している。 現在、AMNDと(CCG)n配列との結合様式の詳細(化学量論や結合定数)について検討を進めるとともに、AMNDをベースとして、リガンドの検出機能(結合力と蛍光特性)の改良を進めている。
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