研究概要 |
水は高温高圧下で極性が大きく低下し,疎水性化合物の溶解度が大きくなることが知られている。この高温高圧水を分離媒体として利用することによって従来にはない環境適合型分離分析システムの実現が可能である。本研究では高温高圧水を移動相とするクロマトグラフィー(超高温水クロマトグラフィー,SWC)を用いて高温高圧下での溶液内化学反応の解析を行うとともに,その研究結果に基づいて,高温高圧水を分離媒体としてばかりではなく反応媒体として利用し,SWCと化学種変換HPLCを融合した新しい環境適合型反応選択的高速分離分析システムを開発することを目的としている。 本研究では以下の3つの課題をそれぞれに対応するSWCシステムを構築して段階的に解決し,反応選択性を利用した新規分離分析法を開発するとともに,これらのシステムを利用した溶液内化学反応の解析を目指す。 (1)高温高圧水中のイオン交換および錯形成反応の平衡と速度に及ぼす温度ならびに圧力効果の解析 イオン交換および錯形成反応を対象とし,その平衡と速度に及ぼす温度の効果を解析する。これと平行してX線吸収微細構造(XAFS)によるイオンの水和構造の解析を行い,水溶液内でのイオン反応と水和構造との関係を明らかにする。 (2)高速化学種変換二次元LC の開発 錯形成反応と酸化還元反応を対象とし,反応の高速化を利用した反応選択的分離分析法を開発する。化学種変換ユニットとしては,固体酸化還元触媒および電解セルを用いる。常温では安定な化学種(酸化体/還元体,金属イオン/金属錯体など)として溶液中に存在する化合物をターゲットとする。 (3)二次的化学平衡分離を目指したオンカラム電気化学的酸化還元化学種変換SWCの開発 電導性固定相を作用電極として外部から電場を印加することにより酸化還元平衡を制御するオンカラム酸化還元化学種変換LCを高温高圧下で行えるシステムを開発する。
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